皆さま、こんにちは。
このような辺境まで、お越し頂き、ありがとうございます。
先日、後半戦スタートを飾るお話であった、「ONE HAND EDEN」が終了いたしました。
色々と、新しい情報が出てきたり、過去からの繋がりが見えてきたりと、目の離せない展開だったと思います。
ここのお話は、リセットの数こそ少ないですが、状況が複雑なので理解しづらく、ご視聴されている方の中には、混乱されている方もいらっしゃるのでは無いでしょうか?
実際、私も、いつもの様に纏めようと思ったのですが、情報量が多く、まとめるのが非常に面倒臭くなった難しかった為、更新が遅くなりました。
一応、最低限の所は抑えたつもりですが、分かり難かったら申し訳ありません。
何かしら考えの参考になれば幸いです。
また、前半戦を含め、今迄の解説記事はこちらになります。
・サクラダリセットのススメ
・中学生編まとめ①
・第3・4話まとめ
・第6~8話まとめ
・第10話まとめ
・第12話まとめ
『ONE HAND EDEN』の概要
今回は4話分という事で、情報が多く、時系列を把握しにくかったと思います。
という訳で、まずは、例の如く、雑な相関図を作りましたので、こちらをどうぞ。
見事に入り組んでおります。
特に、夢世界へは都合、3度も足を運んでおりますので、その関係で状況が理解しづらくなりますね。
では、その辺りを中心に、個々人の状況を交えて、解説していきたいと思います。
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野ノ尾さんと老人のお話
野ノ尾さんが昔お世話になった、猫屋敷に住むおじいさん。
そのおじいさんが、夢世界にいると知った野ノ尾さんは、ケイ達に同行します。
ですが、一度目の同行では、会う事は叶わず、二度目の同行で再会を果たしました。
これは、個人的な感想になってしまいますが、このおじいさんと野ノ尾さんの会話は本当に心に残っております。
特に、『AとBの箱の話』は、私の心に一つの気付きをもたらしてくれましたし、今も、その考えには助けられています。
どんな物にも、色々な側面があって、それを一旦、自分の心に落とし込むと言う事がどれほど重要か、社会に出ている人ならば、嫌と言う程理解しているのでは無いでしょうか?
この世の全てが、自分にとって何処か悪い所を内包したとしていても、その中から自分の手で選び取る。
そうして自分の物として行く過程を、分かり易く説明してくれています。
不器用ですが、大切な事を伝えようとしてくれるおじいさんと、それを素直に受け入れる野ノ尾さんの関係性が、見ていて心地よいのもポイントでしょうか。
そんな彼らの関係性は、野ノ尾さんにとって祖父であり、友人であったのでしょう。
そうした彼らの繋がりが、この物語の一つの大きな転換点となるわけです。
〇 おじいさんとシナリオの写本
そんなおじいさんの能力は、世界の真実を書き記すという物です。
管理局は、その真実が記載された物をシナリオと呼びます。
シナリオとは、言ってしまえば、絶対的に確定した事実です。
未来であれ、過去であれ記載されている事が改変された事は、無いとされています。
そして、それは、過去、未来問わず、延々と書き記されます。
これは作中では語られておりませんでしたが、内容は多岐にわたっており、それこそ、取るに足らない内容も数多く記されております。
そのシナリオを、管理局は危険視した為、一般の人には触れる事の出来ない、夢世界に隔離してしまった訳です。
片桐穂乃歌とその能力
彼女の能力は、『夢の中に現実と寸分違わぬ世界を作る』ものです。
作中で出て来る『ONE HAND EDEN』と言う言葉は、その能力のカテゴリーを示す言葉で、管理局がつけました。
この能力にカテゴライズされてしまうと、管理局の管理対象となり、他者との接触を制限されてしまいます。
元々、彼女は、約9年前、当時14歳で昏睡状態となり、何もできない状態となりました。
ですが、眠りながらも意識はあった為、他者との接触に飢えていたのです。
その為に、このような能力が発現しました。
夢の中限定ですが、他者との交流を望んで発現した能力でしたが、それも管理局の管理対象となった事で、またもや孤独の身となってしまいます。
そうした中、彼女は自分を守る為に、チルチルを作り、自分はミチルとなって、夢世界で生きる事を選択しました。
ですが、それも全て、自作自演である事は、心の奥底では分かっており、そのやり場のない感情が、モンスターとして表れ、夢世界を壊していくことになります。
チルチルの想いとその葛藤
彼の作られた目的は、片桐穂乃歌を孤独から救う事でした。
ですが、先にも書いた通り、彼女の被造物であるチルチルでは、真の意味で片桐穂乃歌を救う事は出来ません。
あの夢世界は、片桐穂乃歌が自分一人でおままごとをしているような物なのです。
自分で作った人形は、真の意味で自分自身を孤独から救う事はありません。
それを分かっているからこそ、人形であるチルチルも悩んでいるのです。
その苦悩と葛藤は、作中の至る所で、彼の口から出てきます。
また、彼にはもう一つの役目がありました。
それは、彼女の身に降りかかるであろう悲惨な未来を回避する事です。
2年前、相馬菫から聞いて、宇川さんが街を消してしまう事を彼は知っていました。
ですから、神となったチルチルは、ミチルである片桐穂乃歌を救うため、秘密裏に咲良田のレプリカを作成して、そこに全てを隔離しました。
作中説明があった通り、病院を中心に海上へと街をコピーしたので、左右が反転してしまった訳ですね。
そして、その狭い箱庭で2年もの間、ずっと片桐穂乃歌のおままごとを見守っていたのです。
ですから、真の街の姿は、左右反転した物ではなく、現実と寸分も違わない物でした。
ケイと話し合い、相談した事でチルチルは、ミチルとなった片桐穂乃歌の目を覚まさせるために、行動を起こします。
即ち、もうおままごとを辞めさせるという事です。これは賭けでした。
何故なら、2年間孤独に過ごした世界に、本当に久し振りに訪れた外からの客人がいるからです。
そう、ケイ達の事ですね。
本当に友達になってくれるかもしれない人々が来たのですから、その人たちと仲良くなって欲しいと思うのは、当然の事です。
しかし、街を消され、ミチルのままでいたい片桐穂乃歌は、チルチルを探し続け、そして、最後は絶望しました。
結果……心を閉ざしてしまった彼女は、能力の使用を辞めてしまい、その意識を手放したのです。
それは、緩慢な自殺と同じ事でした。
能力によって維持されていた彼女の意識と生命活動は、大幅に縮小する事になります。
その為、同じように片桐穂乃歌の能力によって、夢の世界で生活していた猫屋敷のおじいさんも外へと強制的に戻る事になりました。
この結果、腎臓と肺と腰を悪くして、座る事も出来ないおじいさんもまた、シナリオの写本を書くと言う生甲斐を失った事になります。
残酷で優しい嘘、そして……
リセットをした事で、全てが無かったことになり、都合3度目の夢世界へ。
初めて会うミチルをいきなり口説くケイ。
かと思えば、あっさりと振られると、中々にテンポの速い展開です。
そして、そんな行動を見て、口を挟むチルチル。
ちなみに、本当にどうでも良い事ですが、ここのチルチルの動きが個人的にお気に入り。
話を戻して、一回ミチルの元を離れたのは、孤独を実感させる為です。
そして、それは、全てミチルを片桐穂乃歌へ戻す為の、布石でした。
チルチルを説得し、協力を取り付けた事で、再度、一人きりになってしまったミチル。
助けを呼ぶミチルの前に現れたのは……
そう、怪しさ全開の浅井ケイです。
ここでチルチルが助けてしまっては、元の木阿弥です。
ですから、ここでは、どうしても外から来た第三者が助けに来る必要がありました。
そして、チルチルは、危機を演出するために、ビルを破壊すると言う、虚しさを通り越して笑えて来る自作自演をせっせと行います。
しかし、そんな事とはつゆ知らず……今迄望んでいた、誰かに助けてもらう状況を堪能するミチル。
そんなミチルとなった片桐穂乃歌は、他者との繋がりを強烈に求めていた訳で。
今迄、一人で遊んでいたおままごとに、加わってくれる人が現れたのです。
これを喜ばない筈はありません。
そこに付け入る様に、自身を思い出せと、説得するケイ。
ですが、今迄、続けてきたことを変えるには勇気もいります。結果として、迷うミチル。
それを見て、あと一押しと言わんばかりに、自らモンスターへと身を差し出し捕食されるケイ。
この辺りが、実にケイらしいですね。何て嘘くさい笑みなんだ。
この一手が、布石となります。
折角、他者と一緒に過ごせたのに、ミチルはそのチャンスを失いました。
後悔をするミチルの前に現れたのは、止めの一手。
そう、猫屋敷のおじいさんです。
結局、最良の手は、夢世界に生活している二人がお互いに手を取り合う事でした。
そもそも、管理対象であるこの世界に、外から人が来ることは滅多にありません。
今は調査の為に入れているケイ達も、いつ来られなくなるか分からないのです。
ですから、元々、夢世界にいる二人が仲良くなるのが一番、手っ取り早いんですよね。
そのきっかけを作るために、ケイはこんな大掛かりな芝居を打ったわけですね。
結果として、過去の反目を相殺し、神とおじいさんは手を取り合いました。
孤独を解消できた片桐穂乃歌は、鳥かごから出ます。この夕日はその事を表していました。
壁とレプリカであった閉じた世界は消え、本来の夢世界に戻ったのです。
今迄、片桐穂乃歌が他人を受け入れなかった世界の在り方に、不満をもっていた宇川さんでしたが……
二人が関係性を改善しただけでなく、世界の壁が消えた事で、納得し、世界が消去される事もなくなりました。
相馬菫、そして春埼美空の想い
今回のお話では、二人の心情が本当に細やかに描写されておりました。
しかし、物語の間々に挟まるため、理解しづらい部分もあったかと思います。
そんな彼女達の心の動きを解説していきたいと思います。
春埼の想い
今回のお話で一番大事な所。それは、春埼の心情の変化と、その喪失でしょう。
彼女は、今回、チルチルの力で、自己との対話を行いました。
その結果、彼女は自分が気づいても居なかった本心を自覚します。
それは簡単に纏めると、以下の様な事でした。
〇 相馬菫の未来視が、リセットの有用性を消し去る
〇 ケイが本当は、相馬菫の事を好きかもしれない
⇒ 相馬菫への嫉妬
〇 ケイから捨てられる事を恐れている
〇 ケイの為と言いながら、本当は自分の欲望を満たす為に今の関係を続けている
⇒ 本当の意味で彼の幸せを願えていない自分の気持ち
結果:リセットに頼った今の関係性では、ケイを繋ぎ留められない。
⇒ 彼に必要とされる様に変わりたい
これは、最初の頃の春埼と比べると、格段の変化と言っていいでしょう。
彼女は、普通の女の子と同じ様に、嫉妬をし、恋心に翻弄される乙女となっていました。
しかも、彼女はケイの傍にいる為に、どうすれば良いかをちゃんとわかっていました。
嫉妬に狂い、誰かを貶めるだけの存在になる事も無く、自分を高める事で、ケイの心を掴もうと貪欲に進む決意をします。
この辺りが、春埼の凄い所では無いでしょうか?
そして、彼女の持っている善性は、形は変われど、今なお、失われていない事が、良く分かります。
ですが……そんな決意と心境の変化は、失われてしまいました。
皮肉にも彼女の能力であるリセットによって、その決意はなかったことにされたのです。
彼女のこの時の細かい表情から、本当は彼女もリセットしたくない事は、ケイは気づいていました。
ですが、リセットしなくては、片桐穂乃歌さんは救えない事も、事実でした。
ですから、ケイは己の信念に則り、リセットを指示したのです。
相馬菫の想い
後半戦に入り、徐々に彼女の描写が増えて来ました。
特に今回は、彼女の決定的な心情が描かれていますので、その辺りは抑えておきたい所です。
※ネタバレ注意
以下の記事には、これからの物語の核心部分にふれる記述がございます。
直接的な表現は避けておりますが、嫌な方は、お戻り下さい。
まず、今までの相麻菫の行動を見て来て、皆さんも気づいたと思います。
そして、今回、彼女は明言しました。
『私は貴方が、大好きなの』
何とも不思議な雰囲気をまとう彼女の言葉ですから、視聴者の皆様の中には、何となく真実味が無いように感じてしまう方もいるでしょうが……彼女のこの言葉は、本心です。
相麻菫は、浅井ケイの事が大好きなのです。
この『ONE HAND EDEN』の中でも、その様子は細かく描写されておりました。
特に分かりやすかったのは、チルチルと相麻菫の邂逅のシーンです。
リセット前の邂逅では、彼女は非常に不機嫌でした。
それは、ケイが春埼とデート中であることを知っていたからです。
しかし、リセット後の会話では、一転して、気分が良い様子でした。
この夢世界の事が全て終わり、その後、ケイと会えることを知っていたからです。
その上で、このシーンも彼女の想いをよく表しております。
え? よくわからないですか?
彼女の食べている物に、注目して下さい。
これ、一番最初の春埼とのデートで、二人……と言うより、ケイが頼んだものです。
もう、なんて健気なんでしょうか。
一緒に食べられないから、せめて同じものだけでも……と言う所でしょうか。
こんなにまで、彼女はケイの事が大好きなんです。
その前提に立って、彼女の行動を振り返ってみれば、今まで謎だったシーンも、意味を持ってきます。
このシーン。第2話の最後の方です。
今ならば、このベンチのシミの意味が理解できる方も多いのでは無いでしょうか?
最初、リセット前、相麻菫は、ケイと会ってここで話をしていました。
その時、雨が降っており、彼女は傘を手にしておりましたね。
そして、上の問題のシーンは、リセット後の事です。
それが意味する所は……一つしかありません。
彼女は、傘をささずにずぶ濡れであったという事を示唆しております。
そして、何故そんな事になっているのかは、恐らく、皆さんの想像通りかと思います。
彼女にとって、とても悲しいことがあったからです。
そして、これからも悲しいことが起こるからです。
このリセット前と後で、彼女が悲しむような事が、何かあったでしょうか?
ありました。決定的なものが。
これですよ。全ての元凶。
相馬は、未来視の能力者ですから、このことを知っているのです。
その状況下で、彼女はやるべき事を全て終え、橋から身を投げました。
どうでしょうか?
彼女の行動、そして、想いがどういう方向性のものかは、分かりやすくなったかと。
そして、これから、彼女の行動が、物語を牽引していきます。
また、このシーンも、彼女の絶望をよく表しております。
ちなみに、この回想の中で、見るべき点は、服装です。
相麻菫の服装、そして、手渡した物に注目すれば、この回想がいつで、どこの事か、ある程度の予想がつくのではないでしょうか?
彼女の想いと、その行き先に是非、注目していただきたいと思います。
二人の想いがぶつかった先にあるもの
相麻菫 VS 春埼美空
いや、まぁ、大げさに書きましたが、くんずほぐれつのキャットファイトもなく、この作品らしい淡々とした言い合いとなっておりました。
それはそれで、別の意味で、肝が冷えるわけですが。
そして、女性同士だからこそ、見ることの出来る彼女達の表情が見ものです。
激おこな春埼とか。
完全に挑発気味の相馬とか。
そんな中、非常に重要な情報が出てきます。
それは、春埼のこの問いに対する、相馬の答えです。
『貴女は、浅井ケイの敵ですか?』
と言う、春埼の問いに、対して……
『いいえ、私は彼の為だけに、ここにいるの』
と、相馬は答えます。
『そうですか』
ホッとした表情の春埼。このやり取りが、二人の関係性を物語っていますね。
とりあえず、浅井ケイ、爆ぜろ。
以上になります。
お読み頂き、ありがとうございました。
※本記事の画像は、 以下の権利者より引用させて頂きました。
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©河野裕・椎名優⁄KADOKAWA⁄アニメ「サクラダリセット」製作委員会
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